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June 2021

ラマン顕微鏡による重合反応の観察

重合反応は多くの工業プロセスに深く関与しており、接着剤の硬化や、塗料やワニスの乾燥などの日常的な業務においても発生している現象です。工業製品の最適化には、重合反応を観察し、化学修飾の影響や触媒等の添加剤の影響を評価する解析手法が必要です。ここで我々は、ラマンイメージング分析により空気乾燥性アルキド樹脂塗料(ワニス)の重合反応(硬化)を観察しました。ワニスは木材等の保護コーティング用途で広く用いられています。

 WITec alpha300ラマン顕微鏡を用いることで、スライドガラス上のワニスの重合反応(硬化)が、時間をかけて深さ方向にどのように進行していくかを捉えることができます。測定開始直後から24時間経過するまで1時間毎に同一箇所にて2次元ラマンスキャン(デプススキャン)を実施しました。自動測定システムにより測定者は、測定開始以降の操作が不要でした(24時間放置が可能でした)。ラマンイメージサイズは25 x 31 µm²で、1イメージの測定時間は8分(3900スペクトル)でした。

まず、WITecプロジェクトソフトウェア内蔵のTrueComponent Analysis機能を用いてラマンイメージを解析しました。取得したラマンスペクトルから、ワニス、重合体、そしてガラス基板の3成分を識別しました。Fig. Aから、硬化(重合反応)は空気とワニスの界面から始まり、時間が経つにつれて硬化が進行していることがはっきりわかります。24時間後にワニス試料は、ガラス基板との境界付近を除いてほぼ完全に硬化しました。ガラス基板との境界付近の未硬化部分も、数週間後には検出できなくなりました。

 ワニスの硬化前後(液体-固体間)では、主に1654 cm-1のC=C伸縮振動ラマンピーク強度が異なります(Fig. B)。重合反応によりC=C結合が開いてC-C結合になるため、硬化が進むとこのC=C伸縮振動ラマンピーク強度は顕著に減少します。これにより詳細な重合反応の観察が可能となります。硬化するにつれてC=C伸縮振動ラマンピーク強度が減少する一方、約3072 cm-1のC-H伸縮振動ラマンピーク強度はほぼ一定です。よって、この2つのラマンピーク強度の比が、重合反応進行度の指標になります。ピークフィッティングによって各ピクセルのラマンピーク強度比を定量化した後、深さ毎の平均ラマンピーク強度比と観察時間との関係性を描画しました(Fig. C)。Fig. Cでは、重合が時間の経過とともにワニス層の深さ方向へ進行していく過程を詳細に見て取ることができます。

 上記以外の高分子のラマンイメージング例については、アプリケーションの高分子のページや、アプリケーションノート高分子材料(英語)にて閲覧できます。

Alkydharz WebNews

24時間以上にわたるアルキド樹脂塗料(ワニス)の重合反応(硬化)観察結果。(A)反応開始後からの2次元ラマンイメージ(デプスイメージ)、(B)(A)の色に対応するラマンスペクトル:ワニス(赤)、重合体(青)、ガラス基板(緑)、(C)重合度(硬化度)イメージ(縦軸:深さ、横軸:時間)。詳細は本文を参照してください。